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紅に変わり行く景色の謎を追え!【推理編】
明治天皇が巡幸で、きみまち阪の地へお訪ねになった際、皇后様の手紙が先にお待ちになっていた。
傒后阪。「大宮の うちにありても あつき日を いかなる山か 君はこゆらむ」
皇居にいても暑いこの日ですが どのような山をあなたは越えているのでしょうか
私はなるほど、と思った。
皇后様のお心遣い。明治天皇はいかほど喜ばしかったことか。
手紙は人と人が離れていても、心と心を結ぶ。それは愛にあふれる素敵なことだったのだ。
恋文の由来がかかれた看板と石碑の歌を見て、私はしばし放心してしまった。
すると、例の3人がようやく追いついた。
何だか肩で息をしている。3つの顔が鬼気迫る表情なのだ。
ただ、恋文の由来を説明する気が満々だったようなので、3人とも少し残念そうな顔をして、七座山の空を眺めていた。一方で、私は自分がどんな歩き方をしてきたか、全く覚えていない。
むしろ、好奇心のままに自ら突き進んだ。まるで闘牛が赤い布に反応してまっすぐ進むように。
その好奇心の対象、恋文の謎は自分自身の足で解決させた。
ややあって、私の放心が解けた。
3人はそれぞれに、紅葉狩りを楽しんでいた。
ドームは「パワーもらうぞ~」と七座山の方へ両手を掲げていて、それを見たミヒロは呆れて苦笑いしている。
探偵エルフさんのレナは端っこで、ひっそりと写真を撮っていた。私のタイミングを計っていたようだ。
一緒に同居しているので、察しが良すぎるレナはすぐ気づくと、私の方へ寄ってきた。
大好きなレナの申し出は、私に断る理由がない。
彼女に話しかけられただけで、もう笑顔になるのだ。
私は一言、二言、レナと話してから、その差し出された手を受け入れた。
「ソナタ君、ソナタ君、中央の方にある屏風岩を見に行かないかい?」
「せば、紅葉見に行ぐが」
山は標高の高いところから低い方へ紅葉が進む。
つまり、平地の方は紅葉が最後になる。
きみまち阪はゆっくりと紅葉が進む場所で、例年、紅葉シーズン後半まで色づいている場所なのだ。
今日の紅葉狩りでは、屏風岩の方までしっかり真っ赤に紅葉が広がっていた。
観光客たち、かなりの人とすれ違う。
私はレナと一緒に、きみまち阪公園内を歩く。
このまま手をつなぐかどうか、悩んだが後ろの気配を感じた。結局、手は放してしまった。
私たちの後ろ、金魚のフンみたいにくっつくドームとミヒロだ。
悪い性根の2人は、顔を寄せ合って良からぬ企みごとをしているのだった。
屏風岩の見える場所へ移動中、勢いでミヒロがからかい出した。
旧友は、向こうにある恋文ポストを指さす。そういうところは一生変わらないだろうな。少しうんざりした顔に、私はなった。
どうせいつもの悪いノリなのだ。来るとわかっていれば、傷つくこともないのだ。
「ほら、ソナ。レナに手紙を出せ」
「まんだ書いてねぇばって~」
「まんだ? てことは~まだ!? じゃあ、いつ出すの?」
「年賀状だッ!!」
来年の1月1日に、レナに恋文を年賀状として送ること。
私の予定として今、確定した。
カシャッと音が鳴る。無表情を装うドームが、iPhoneアプリで写真を撮った。
それを見たミヒロは、ニヤニヤがいつも以上にえげつない。悪い笑顔だ。
フォローしてくれるのは、パートナーの探偵エルフさんのレナだけだ。
ただ彼女は混乱しているのか、フォローの仕方がずれている。
いや、彼女の視点は並みではなく、ずれているから面白いのだけど。
「え、ラブレターを書いてくれるのかい。それは嬉しいけど、上手に手紙を書くのは緊張しないかい?」
「レナっこほど、くせ強ぇ字だば、私は書かねぇ!」
「字が汚いのは、いつものことだろう。英語の試験でも先生が理解してくれないんだ」
「レナ、答えが出ねぇの、めぐせぇ筆記体で誤魔化してらべ」
「ぐ……、探偵エルフさんは依頼人のため……」
「自分のこともちゃんとせで!」
私は叱咤しつつも、別のことを考えていた。
最近、楽しくなっている進学校の高校生活を思い出したのだ。
高校生活でレナの得意科目は、意外と英語ではない。
社会科を全体的に、と化学が出来ているようだ。
ミヒロだと数学に、シアだと全教科に、高い学力があるらしい。
えぇと、私は……国語が苦手なのだ。それ以外は並みの学力である。
まぁ、学力なんて個人差あることだ。
さて、妄想から今の場所に戻ろう。
いたずらが過ぎたのか、ちょっと反省の色をミヒロは顔に浮かべている。
目に見えて反省顔をする割に、すぐ反省したことを忘れる。
女子大生のドームは、私たちの痴話げんかをパシャパシャとiPhoneで写真に撮っていた。
それを見た旧友は、なぜかイラついた顔をして、厳しい質問をドームにした。
妙な正義感である。無論、旧友の独自ルールだろう。
「ドームは高校時代さ、何の教科が得意だったんだよ?」
「あ~、高校時代ねぇ……強いて言えば、体育だな。後は赤点コース……って、何で私にも火をつけるぅ!」
「うるせぇ。お前の指示に従っていると、あたしが面白くねぇ」
「むぅぅぅぅ。屏風岩のパワーも両手にもらっちゃうもんねぇ」
「勝手にしろ」
ドーム・ミヒロの悪だくみ同盟が綻び出しているようだ。
私は腹の虫が鳴ってしまい、私は赤面した。隣からクスクスと笑うレナに、私は手を引かれる。
また手を握られているが、もうレナならいいかな、と私は思う。
最近、地元を調査している状態と同じであるから、今更、照れることでもない。
『きみ恋カフェ』さんで、お昼ごはんにしよう。
ドームを見捨てた旧友ミヒロも合流し、この紅葉時期に限定販売の『行楽弁当』を頼んだ。
思案の結果、外で食べることになった。
曇り空が流れていき、光が照らす。
木々の葉っぱが囁く。その隙間から光が注ぐ。
こういうお日柄よい日は、それだけでも気持ちいいのだ。
すごくピクニック感があって、高校生になっても楽しいものである。
目の前に木の机、木の椅子に私たちは座る。
買ったお弁当を3人で食べた。ここから紅葉の中の屏風岩が映えて見える。
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