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秋田の夜空を翔る星の謎を追え!【解決編】
阿仁合から10数kmの山道を登ってきた。阿仁スキー場の駐車場には、天体観測を楽しむ人たちがそこそこにいた。
今月はペルセウス流星群らしい。今晩が極大で天候も晴れ。
ライリさん曰く、天体観測ファンはたまらない最高の状態らしい。
ホームズさんが虫よけスプレーを念のため、もう少し丁寧にレイアさんにしてもらっている間、外で私とライリさんは2人きりだ。
長々と星の話をされると思った。
彼は大真面目に言った。どうやら私の表情は読みやすいらしい。
「ソナタさんはかなり純朴だから、表情から何を考えているか読めるよ~」
「んだば、何考えてらが分かるすか?」
「ん~、僕もレイアちゃんに告白しようと思うんだ~!」
「へぇ~。……えええッ!!」
「し~、声が大きいね~」
「すみません」
「カマかけたら当たったっちゃったかな~? じゃあ、そっちもがんばりなよ~」
レイアさんとホームズさんが車から出てきた。
そして、ライリさんはレイアさんを連れて、星が綺麗に見える方へ歩いて行ってしまった。
もうホームズさんとは呼べないな。
森吉山で、レナと2人きりになった。秋田の夜空に星が流れる夜だ。自然と目線は上に行く。
今、顔が真っ赤でも彼女には見えないだろう。
「ソナタ君?」
「レナと星を見れで良がった!」
「!!」
「レナ!」
「はい、ソナタ君!」
「何でもねぇ!」
案外、レナと名前呼びがすんなりと言えた。
その間、流星は何度も私たちの頭上を翔けている。
『何でもない』ことだから、何でもないと言っているわけではない。
ここまで来ても、まだ照れ隠しだ。
宇宙の現象としてこんなに美しく、エルフのレナ相手に話せることが楽しく、今の私はそう思えた。
レナは静かに星空を見上げていたけど、涙が頬を伝っていた。
星降る夜は、今までの色々な思いが流れる。
お互いに言葉は少なかったけど、噛みしめるように話し合った。
「どうしたんだ?」
「あまりにも星が綺麗なんで……ね」
「ありがとう。夏の思い出が1つ増えた……ありがとう」
「はじめての感情が多くて、何だか今夜はとてもうれしい夜だ」
「んだな、私もだ」
今は感動で胸がいっぱいだ。
古典的なムードの高め方だけど、言葉よりも多く分かり合えた気がする。
探偵エルフさんのレナと、秋田の夜空に翔る星を追った、夏の思い出の日を私は忘れたくない。
しばらく星を見ていたけど、車の中へ戻るにはまだ名残惜しい。
気持ちが上がり過ぎて、私たちは寝落ちするのも早かった。
阿仁に住むレイアさんのお宅に一晩お世話になる。
次の日、始発とともに鷹巣駅行きの秋田内陸線で戻った。最寄りの駅まで阿仁の男女コンビは見送りに来てくれた。
列車の中では、景色をボーと眺めて、お互いに言葉がなかった。
忘れないように思い出を何度も繰り返していたからだ。
あぁ戻るのか、と思えるので、昨夜は特別な出来事をしてきたのだ。
鷹巣駅からは、あの低速な原付バイクで大館へ戻ることになる。レナは眠そうに目をこすってから、ヘルメットを私に渡してきた。
レナの目が腫れていたので、思わず私は噴き出した。
バイクのサイドミラーで自分の顔を見たレナはバツが悪そうな顔をした。
私は1発かました。
「お恥ずかしい顔ですが、大館に戻りたいと思います」
「レナ!」
「夢じゃないんだ! また泣きそう!」
「ちゃんと運転せじゃ!」
安全運転は大事だ。今日のレナは涙を堪えた。
帰りの国道7号線は、行きよりも低速運転だった。
その乗車の長い間、レナの胴に抱きついても文句は言われない。
レナがくすぐったくて笑って、背中が動いた。
まだ、この距離感に慣れなくて。
少しの静寂があったけど、向こう側の闇に溶けて行ったようだ。
強い朝日が原付バイクに当たる。一斉にセミが鳴ぎ出す。
朝のうちは夏の生暖かい風でさえ優しく、私には居心地よく感じた。
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