秋田へようこそ探偵エルフさん13-1

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うっかり除雪のち温泉パラダイスの謎を追え!【事件編】

前回・・・秋田へようこそ探偵エルフさん12-3

 ハロウィンのおどろおどろしい音楽が消え、街に明るいクリスマスソングがあふれて来た。

 東北とうほく地方の秋は、関東かんとう地方より早く終わってしまう。

 何だか、損をした気分だ。

 それどころか、心身の負担が倍になる案件がやってくる。

 やつが降り始めたのだ。

 どうやら、冬が始まったみたい。

 私は表情を硬くして、空を見上げた。

 いつの間にか、空一面に黒い雲が広がっていた。

 もう白い雪が降る、そんな肌を刺す寒さだ。

 北海道、東北とうほく地方や北陸ほくりく地方は、冬の日照時間が少ない。

 とどのつまり、雲がかかりやすく、暗い冬が長い。

 それは当然、雪の降る時期も重なっている。

 秋田県の積雪量だが、青森県の酸ヶ湯すかゆや新潟県と比べて、それほどでもないかもしれない。

 毎日、私が見る天気予報的には、秋田県南も毎年雪が多いような気がする。

 それに比べれば、私の住む秋田県北の大館おおだて市は可愛かわいいものだろうか。

 雪国にいる私の主観だけど。

 美しい雪の結晶も、2~3日も経てば景色にきる。

 視界的に、精神的に、閉鎖的な灰色の雲の下、白い雪の世界が続く訳だ。

 除雪、交通障害、精神的な落ち込みやすさなど、冬特有の問題が出てくるのだ。

 ただただ毎日、雪は人間の生活を脅かす怪物になる。

 長い冬、雪という怪物とのダンスは、今季いつまで踊るのだろうか。

 悶々もんもんとした日々が始まる予感、すでに私は鬱々うつうつとしてきた。

 我が家の居候いそうろう、探偵エルフの少女、レナ=ホームズにとって、秋田で過ごす冬は2度目だ。

 去年、阿仁あにで冬を越した際はお客さん状態だったらしいから、彼女が真っ当に雪へ立ち向かうのは初かもしれない。

 雪国生まれの私は、長く過酷な生活にもきっとある冬の良さを、彼女へ伝えることが出来るだろうか。

 冷静な判断力が除雪の日々で鈍って、「こいつはうっかりだ」とネガティブ発言で私の口がすべらないように、今年の冬は気をつけたい。

 あわよくば、冬の楽園ウィンターパラダイスを見つけて、楽しい期間にしたいものだ。

 師走しわすのある日。家の外は白銀世界だった。

 木々も、岩も、地面も、目の前の全ての景色、白い雪が積もっていた。

 ただし、日本暮らしも長くなっているレナには見慣れた光景のようだ。

 私は無言で、スノーダンプの持ち手パイプを、彼女に押し付けた。

 レナの表情が強張る。

「あのー、居候いそうろうもやる必要ありますかー」

「私はゴマをすられても、家さ居れとは言わねぇど」

 私は無表情で、レナに答えた。

 雪国は問答無用だ。

 行動あるのみ。

 お代官様ほどではございません、のゴマすり手をレナは止めた。

 ようやくあきらめて、スノーダンプを受け取った。

「何だか、手首が疲れるよな」

「それだば足腰さ、力入れてねがらだ。手でやろうどすっと、上辺の雪しか寄せられねど」

 ややあって、レナが口を開いた。

 除雪がある程度、片付いたところだ。

 まだ今、雪の量は、季節はじめで大した量でない。

 盛んな降雪期では、スノーダンプの限界値を突破して、除雪場への道を掘り起こす必要がある時もある。

 そうなのだが、どんな時も雪への注意はある。

 足腰の重心をしっかりしていないと、バランスを崩す上に、酷い怪我ケガや痛みを負うことになる。

 武道にも通ずることと、幼い私は、父から聞いた。

 雪をなめていると、大変な目に遭う。

 雪に足を取られて、すっ転んでおお怪我ケガ

 唇の上を何針もうことになる。

 過去の痛みを思い出した。

 苦い経験値が、今の私にはある。

 現在にいるレナは、高校生になった私の覚悟が決まった表情を察した。

「かつての冬に何があったか知らないが、ソナタ君は面構えが違うな」

「歩き方は、腰を落とせ、足裏全体で小刻みだ。もし転ぶときは、尻から行け」

「秋田弁を忘れたソナタ君は本気の奴か」

「頭上の氷柱つららや雪の塊、見えない側溝、動いている除雪機や車には注意だ。参考にしてけれ。へばな!」

 雪をなめるな。

 私の中にいる、超神ちょうじんネイガーさんが表面へ出て来たようだ。

 YouTube公式で、秋田のローカルヒーローであるネイガーさんの動画を以前に見ていたので、レナは自然と空気を読んだようだ。

 キョトンともせず、おぉと感嘆の声と一緒に拍手で応える。

 度々登場する超神ちょうじんネイガーさんとは、秋田県のローカルヒーローだ。

 わりぃ子はいねぇがー。

 ただし、良い子には優しい。

 そして毎年、ネイガーさんは、秋田県内で田植えも稲刈りもする。

 本当に活動もローカルなのだ。

「ネイガーが言うならば、雪の備えもちゃんとしないとな」

「私が言ったんだけどなー」

 妙なテンションになった私に付き合えるのは、レナの稀有けうな才能だと思う。

 ただ、レナに悪ノリされると、急速に冷めてしまうのが私の欠点だろう。

 レナはアヒル口でねた。

 可愛かわいい口の形なのに、全然可愛かわいくないことを私は言われた。

「で、除雪の対価は何なのさ」

「対価なぁ」

「一生懸命に汗をかいて雪を寄せた。だから対価がある。イギリス人は、その対価を知りたい」

「話の筋は通ってらばって。本気の話なんだが?」

 レナは大真面目に、除雪に対価があると思っていたようだ。

 毎日、除雪することになるので、ご褒美ほうびをあげる程でもない日常事だと私は思うのだ。

 レナの目から光が消えた。

 秋田の冬は、イギリス産エルフ娘に洗礼を浴びせた。

 仏教では朝の清掃は奉仕的な活動で、黙々と行うものだ。

 日本人は無宗教なのだが、掃除に対価を求めることはない。

 キリスト教徒であっても、確か、神と隣人への愛を示すため、奉仕活動として掃除はすると思う。

 あぁ、雪かきは奉仕活動である掃除の範ちゅうを越えている、とレナは思うのか。

 除雪がボランティア化しているのが当たり前すぎて、私にはない価値観だったね。

 落ち込んだレナは、除雪に対価があることを否定した私に答えてくれた。

 ちょっと私の求めていた答えと違う。

 冬の大イベントについて、レナはこう言うのだ。

「イングランド国教会は、あらゆる人種、性別、文化的背景の人々を歓迎しています。教会のイベントは、どんな方もウェルカムですよ。メリークリスマス」

「まんつ、ここイギリスでねぐて、日本だべ。だばって、クリスマスも近ぇんだなぁ」

 高校生活は、冬休みに入っている。

 今日が12月23日と、私は知っている。

 そういえば、家の中でするイベントがヤナギ家ではないので忘れていたけど、もうすぐクリスマスだったか。

 ヤナギ家では、外イベントを、雪のない季節でする。

 レナは、心安らかに、温かいクリスマスを過ごしたかったのかもしれない。

 何だか日本だけでなく、ヤナギ家のルールまで居候いそうろうに押し付けてしまった。

 ため息をついた私は「うっかり」口をすべらせたことを後悔した。

 様子を見ていた父、光春ミツハルがサンタの代わりにやって来た。

 辛気臭い空気をぶち壊すくらい、笑顔満点の父であった。

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【つづく】

秋田へようこそ探偵エルフさん13-2

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著者

鬼容章(きもりあきら)

秋田県大館市生まれ、現在も大館市在住✨奥秋田を推す創作サバイバーの鬼容章です🐸φ✨秋田県に関する投稿は、僕🐸の個人見解です✨                          

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