秋田へようこそ探偵エルフさん4-1

秋田へようこそ、探偵エルフさん!//
  1. ホーム
  2. 秋田へようこそ、探偵エルフさん!
  3. 秋田へようこそ探偵エルフさん4-1

本ページはプロモーションが含まれています。

【広告・PR】

雨季に香る赤い花の謎を追え!【事件編】

前回・・・秋田へようこそ探偵エルフさん3-3

 柔らかな春の終わり。

 風薫る夏の始まり。

 今、季節の中間地点である。

 東北とうほく地方の北部の梅雨入りは、例年通りの予想だ。

 そして北海道を除いて、最後に梅雨に入った。

 6月中旬の秋田県の北部、大館おおだて市は雨の日が多いようだ。

 シトシトと降り続く雨は、私の強張った感情を洗い流す。

 さらに、ジメジメと肌にまとわりつく湿気は、ためていた身体の疲れを実感させる。

 竜鳴高校りゅうめいこうこうには今ちょうど来ているが、私は復学前であった。

 まだ始まってもない、まだ終わっていないのにもかかわらず、私は眠かった。

 探偵エルフの居候いそうろう、ホームズさんは、余裕ありそうな笑みを見せて、私の高校の編入試験を終えた。

 私も一応、学力を判断する上で、試験を受けた。

 対照的に私の顔色の方が悪い。

 梅雨に入ってから、まだ2~3日目なのに、すでに私はノイローゼ気味だ。

 原因は分かっている。

 試験の結果が悪かったのではない。

 自己採点では、私も合格範囲を超えている。

 単純に、旧友あいつのいるクラスに戻るのが、この期に及んで心苦しいのだ。

 この複雑な心境は、あれこれ悩むティーンの女子らしさかもしれない。

 試験部屋になっていた空き教室で、ホームズさんは着慣れない制服姿で、窓の外を見ていた。

 私はお尻に根が生えたように、何だか体が重くて、まだ立ち上がれなかった。

 背中越しにホームズさんが私に語りかける。

「許すって何だろうな」

「え?」

「怒りや憎しみを覚えるほど、他人に不当な扱いを受けたと思っている。明らかに、相手を許すことで、自分の未来が開けるのは分かっている。なのに、許せない自分がいる」

だれん話?」

「私自身の話だ、と思う」

「ホームズさんにしては歯切れ悪りぃな」

 私は一瞬、いつものように私の的を射ったのかと思った。

 しかし、窓に映るホームズさんは雨と光で鏡になっている、金髪ツインテールで碧眼あおめ、長耳のエルフ、自分の姿をただ見ていたのだ。

 珍しく憂いた表情をしていたので、私の方が気を遣いたくなる。

「私さ手かせば、おめのことやるとき、参考になるべ」

「じゃあ、そうしようか。明日、君を引きこもりに追い込んだ奴と和解させよう。探偵らしく依頼をまず解決だ」

「え?」

 窓へは無表情だったのに、私の方を向いたときには、いつもの好奇心まみれな探偵エルフ顔だった。

 次の日の朝は、雨は少し降っていた。

 ただ出校に問題ない程度だ。

 ホームズさんと入口で分かれ、私はまず1人で教室に入った。

 ざわついているクラス内。不登校生徒が帰ってくると、そんな反応になるのは私も想定済みだ。

 ただエルフのホームズさんが制服に着られた姿で、教室に入ってくるとクラスメイトの関心事は、そちらへ100%向かった。

 ホームズさんは、クラスメイトの長身の女子に何か話しかけてから、こちらに歩いてきた。

……と思ったら、通過して、後ろの方に向かって行った。

「あぁ、君が孫市望央マゴイチミヒロくんか。いやぁ、その画面の表示、アデルの曲だな。君が聞く女性シンガーの曲は良いセンスだって言うのは、今わかったぞ。1つ問おう、君は失った2か月間についてどう思っている?」

「……」

 ちょっと喧嘩腰けんかごしな探偵エルフさんの話に、外界の音を遮断していたミヒロは、机に突っ伏していた顔を上げざるを得なかった。

 その際、イギリスの女性歌手、『アデル』の曲を聞いていたのを、イギリス産エルフ娘のホームズさんに見つかったのだ。

 探偵エルフのホームズさんは、私とミヒロの双方の立場を分かった上で、早々に決着をつけようとミヒロに話しかけたのだ。

 私は2か月かけて復調したが、ミヒロの立場では2か月をドブに捨てたようなものだ。

 この旧友は登校初日から今まで、クラスでは無視をされて、影口されてきただろう。

 なぜなら、私は全ての罪を旧友に着てもらい、自分が痛みを受けた被害者として、学校から逃げていたからだ。

 恐怖でおびえた出荷間近の子牛のように、こっそりと私は小さく振り返る。

 そのとき、ミヒロはホームズさんでなく、今日初めて私の顔を認識したようだ。

 ホームズさんには何1つ返事をせず、イヤホンを外して、椅子から立ち上がり、私の席まで歩いてきた。

 ミヒロはプライドが高い娘だ。

 絶対に自分から頭を下げない。

「ごめん、あたしが悪かった。また友達に戻ってください」

 ミヒロは震える小さな声で、私に許しを求めた。

 その差し出された手をどうするか分かっているのに。

 どうしようもない旧友に、また私の責任を押し付けてしまったことに、とても怖くなっていた。

『許せない自分を、今、許してあげよう』

 宙をさまよっていた私の目を、ホームズさんは海外の女優のように強い目力で見つめ返して、だけども静かに小さくうなずいた。

 私は震える手で、ミヒロの震える手を握り返した。

「許す」

 私は声が出るか出ないかの音で、ミヒロに返事をした。

 反抗的に赤い色に染めた短髪、かつ小学生並みに低身長、アンバランスな姿の娘が、今のミヒロだ。

 だけど、今の驚いている表情は、かつて小学生時代の私も見た、素の旧友の顔だった。

「はい、喧嘩けんかは終了っと。これにて一見落着ね」

 ホームズさんのダメ押しの一声で、クラスメイトたちは拍手を送るしかなかった。

 これにて一件落着、と劇中の遠山とおやまきんさんのような台詞セリフを間髪なく入れた。

 それは、一般のクラスメイトにも事件は解決したと脳に認識させる、巧妙な探偵らしい手口だった。

 その後、すぐに担任が授業を始める。

 あれよあれよと、出校初日が終わっていた。

 ホームズさんは、金髪碧眼きんぱつへきがんで、さらにエルフらしいとんがり長耳なので、どこにいても目立つ容姿だ。

 色々な生徒たちから、あちこちで連れ回され、質問攻めに遭っていた。

 ホームズさんが、我が家へ帰宅したとき、すごい歳を取ってしまったように見えた。

 疲労の度合いが強いらしく、ものすごく老けた顔をしていた。

「大丈夫だが。顔色悪くねが?」

「あぁ、昨日の君のように青白い顔をしているかい?」

「んたこどは、どーでもいいんだ。何か、私に出来ることは」

「……」

「うわッ!」

 気絶したように、ホームズさんは玄関先で倒れた。

 彼女の身体が床に倒れないように、私は慌てて支えた。

 ホームズさんは、エルフにしては強気な口調だが、それは身体を強くする訳ではないのだ。

 人間より4倍長生きの反面、4倍身体が弱いと一般的に言われるエルフ属だ。

 虚弱な彼女なりに出来る限りだったようだ。

 私は気絶したエルフさんを半分背負いながら、エルフの足を引きずらせて部屋まで歩き、何とか布団の中に寝かしつけることが出来た。

【広告・PR】

【つづく】

秋田へようこそ探偵エルフさん4-2 

関連ブログ記事

\シェアボタンです/

著者

鬼容章(きもりあきら)

秋田県大館市生まれ、現在も大館市在住✨奥秋田を推す創作サバイバーの鬼容章です🐸φ✨秋田県に関する投稿は、僕🐸の個人見解です✨                          

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)