秋田へようこそ探偵エルフさん15-1

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冬の残滓 おこうの足跡の謎を追え!【事件編】

前回・・・秋田へようこそ探偵エルフさん14-3

  今年の冬は、どれだけの雪が降り、どれだけの雪を除排雪してきただろう。

 湿った重い雪の除雪が増えたのは、地球温暖化の影響で日本海の水温が上がり、その海水の蒸発で雪雲ができやすいからだと、テレビ番組の気象予報士さんが言っていた。

 白銀世界に喜んでいたのは、12月の一瞬だけだった。

 1月の記憶というものが雪で埋まり、除雪を除いたら比内地鶏ひないじどりのおまつり以外のことは忘れた。

 悲しいけど、これが雪国なのよ、と私は思う。

 という訳で、2月の第2週末がきて、今日は土曜日だ。

 やはり天気予報通り、秋田の冬は最後の山場に差し掛かっていた。

 朝から、ゴッソリと雪が積もった。

 レナを寝床から起こしたけど、寝ぼけた同居人はこたつでまた寝ていた。

 このエルフ娘が、猫の着ぐるみだった。

 狙っていない女の子らしさの塊。

 その綺麗きれいな寝顔の可愛かわいさは、あざといものだ。

 ため息。

 猫の手も借りたいが、私はあざといエルフ娘をまだ寝かせることにした。

 防寒具を身に着ける準備を整え、私は1人で外へ向かった。

 イギリス産の娘は今日も戦力外だ。

 朝のキンキンに冷えた中、父と私は除排雪に追われていた。

 自宅用の小さい除雪機を使う父が、近所の除雪に行く段階で、私はお役御免となる。

 父は、除雪後の用事もあるのでそのまま家を出る、とのことだ。

 大きくうなずき、私は家へ戻った。

さみぃッ」

 忘れていた寒さ。

 暖かい室内で余計に感じる。

 家の中に入って、私は思い出したのだ。

 この寒暖差には、今季も最後まで慣れそうにない。

 乾いたタオルで脚の汗をいていて、私はしかめっ面になった。

 女子力皆無の筋肉マシマシ。

 冬の大バカ野郎め、私は心の中だけでも泣きたいぞ。 

 湿っぽい私の空気を読んでくれて、レナが温かい飲み物を持ってきてくれた。

「お疲れ」

「起きだんなら、手伝えっで」

 猫エルフ娘から、ジンジャーシロップの葛粉くずこ入りカップを受け取り、私は文句を垂れながら飲んだ。

 朝の労働後の、温活おんかつの飲み物が美味いこと、この上ない。

 じんわり身体の中から温まる感じと、弱った胃腸に良さそうなトロみ感がある。

 冬の朝のちょっと贅沢ぜいたく、たまらん。

 感動で震える秋田人に、レナは手に持っていた菓子を差し出した。

「はい、煉屋ねりやのバナナ」

あめんめな。だばって、皮が口の中さ、くっつぐ」

「ジンジャーで口を流そう」

「お、すげぇ。無限に食べられる。んな訳あっがいッ!」

 もうすぐ出会って1周年を迎える私たちは仲良いコンビなので、会話がコントっぽくなることがある。

 そうそう。

 秋田ってお笑い芸人コンビだと、ちぇすさんや、ねじさんだね。

 それはさておき。

 今日は何の日か、猫の着ぐるみから、冬用探偵服に着替えたレナに尋ねた。

 質問者の私も、雪と煉屋ねりやのバナナで思い出したのだけどさ。

 レナは、スンとした真顔で答えた。

「さてさて、バレンタインデー・イブか。なんだ、ソナタ君。チョコが欲しいのかい?」

「欲しいばって、秋田の小正月行事と言えばさ、あのイベントだべ」

「あ、これは嫌な予感がする」

「はい、時間切れだ。もうイベントとかバレンタインどころじゃねぇがら。来週がらの試験の勉強さねばねぇがら」

 2回、ねぇがら。

 大事なことは、強調して言う私だ。

 知ったかぶりの顔になりかけていたレナ。

 それを私は目を細めて脅かしたのだ。

 すると、お約束の泣きそうな顔になったエルフ娘。

 長い両耳が震えだした。

 悲しみと驚きと混乱で、ただの乙女と化したエルフ、レナは羞恥心しゅうちしんのままを叫んだ。

「ん、試験だって! なんで言ってくれなかったの?」

「バレンタインを返上せば間に合うよんた」

「お菓子のイベントがなくなるのは困る。私のモチベーションには必要なんだよ」

「んだば、今日はアメッコ市さ行ぐが」

「アメッコ市……とは?」

 レナはまだ1年を秋田で過ごしていない。

 大館おおだてのアメッコ市をまだ知らなくて当然なのだ。

 意地悪が二重だったので、流石に私は説明してあげた。

 大館おおだてアメッコ市。

 およそ織田信長おだのぶなが豊臣秀吉とよとみひでよしの頃、天正時代てんしょうじだいを起源とする大館おおだての小正月行事だ。

 かつて砂糖が貴重品だったので、米で作った甘味料のあめを、餅につけて食べた農家の主婦がいた。

 そのあめをミズキの枝に結び、稲穂の代わりに神様へささげて、豊作祈願をする土地の行事が由来だ。

 やがて農家の主婦が、大館おおだての町であめを売るようになる。

 人々は1年間の健康と幸福を祈るため、各村から町へあめを買いに来た。

 そして、神棚へ塩と上げたあめを下げる際に食べる風習となった。

 このあめを食べると、1年間、病気知らずというご利益があるとされる。

 それに、田代岳たしろだけ白髭大神しらひげおおかみが、雪にまぎれてあめを買いに来る伝承もあった。

 そんなこんな民話・風習をまとめて、アメッコ市としての観光行事は50年間続いている。

 冬眠からレナを起こすには十分なイベントだった。

 探偵さんは、目を輝かせて、雪が降り出した外へ飛び出した。

 エルフさん、雪に喜んでいるように見えたので、私は飼い犬を運動させている気持ちになっていたけどね。

 まぁ、レナが犬扱いなのは、私の脳内妄想の範ちゅうで。

 寒々と震えながら歩くレナ。

 ちょっと肥えても、虚弱体質は変わらず。

 休みの日に連れ出したのは、ちょっと悪かったと私も思った。

 道中のコンビニエンスストアに寄った。

 そこで少し休憩にした。

 休憩の間に、雪沢ゆきさわから旧友のミヒロを呼んだ。

 除雪で遅くなると言っていたわりに、旧友の祖父の車で早々に合流してくれた。

 もう1人追加。

 見慣れた顔、長身の娘が車から飛び出してきた。

「わーい。ソナちゃん、見ぃつけた!」

「シア、おおぅ!」

 飼い主を見つけて、喜びながら飛びかかる秋田犬のようだ。

 この娘が、シア。

 残念な美人の級友、話すと子供っぽくなる。

「うーす。レナっこ、ソナ。待たせたな」

 そして、気だるい声を発した、小柄なヤンキー娘がミヒロだ。

 この旧友、病み上がりなので、私の感覚では1つトーンが低い声だ。

 お孫さんであるミヒロがお礼を言うと、おじいさんは車を出した。

 その後で、抱き付くシアをがしながら、私は口を開いた。

「なして、シアが一緒にいんだ?」

「あたしが病み上がりだからさ、除雪を手伝ってくれたんだよ。つーか、うちの風呂に朝から入りに来た」

「あっはっは。んなことして、風邪ひかねぇんだな」

「お前のとこのレナっことは、身体の出来が違うんだよ」

 私とミヒロは小学時代からの腐れ縁。

 だけど、まだ若干かみ合わない冗談を言い合うときがある。

 去年の数か月間で、かなり仲が戻った。

 視点を変えて。

 今のひどい毒吐き合戦で、傷ついたのはシアとレナだった。

「「悪かったねッ!」」

 プリプリと怒った女子2人を追いかけて、私たちも田町たまちの長い坂を上り出した。

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【つづく】

秋田へようこそ探偵エルフさん15-2

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著者

鬼容章(きもりあきら)

秋田県大館市生まれ、現在も大館市在住✨奥秋田を推す創作サバイバーの鬼容章です🐸φ✨秋田県に関する投稿は、僕🐸の個人見解です✨                          

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