秋田へようこそ探偵エルフさん12-1

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紅に変わり行く景色の謎を追え!【事件編】

前回・・・秋田へようこそ探偵エルフさん11-3

 秋は気まぐれに変わる天気、そして肌寒さが増す一方だ。

 吹雪ホワイトアウトまでとは行かないけど、朝は濃霧で視界が悪い。

 その上、葉っぱや植物に、露や霜が場所によっては現れている。

 気温が1桁の前半になってくる。

 いよいよ雪が降り出すのではないかと、余計な心配を季節柄、日本人はしている。

 それに、後2か月。今年も残り日数わずかだ。

 ハロウィンと紅葉が終われば、行事も師走の雑務で忙しい。

 それは私の住む秋田県も例外ではない。

 今はまだ、ハロウィンと紅葉で、秋の行事が埋め尽くされているような気がする。

 山に朝靄がかかり、道路は昨日の雨で少し濡れていた。

 そこに1台のレンタカーが走る。

 運転席のドーム、助手席のミヒロは、無表情を装っていた。

 2人とも緊張で目がギンギンになっている。

 おい、バックミラーに無様な顔が2つ映っているぞ。

ドームがレンタルした車が、大館おおだてから能代市のしろしまでの秋田自動車道を走る。

 朝眠さの極みという、ありふれた女子大生のドームが、そこそこな安全運転している。

 後ろの席の私たちの方も、現状がよく分かっていない。というか、レナは舟をこぎ、目が寝ている。

 私たち4人は、レンタルカーの暖房の効きが悪くて、移動の終始はとりあえず無言であった……と私の本音を伝えておこう。

普段、弘前ひろさきに住んでいる女子大学生のドームが、真顔で「きみまち阪公園ざかこうえんの紅葉見に行こう」と話してきた。

 反骨心の塊の、地元大館の女子高生ミヒロが「おう、行こうぜ」と肯定的な返事をした。

 そんな会話は、ただの悪だくみに聞こえる。

 2人とも普段、良い子にはしないタイプだから。

 さて、私たちの乗る車は、道の駅ふたついの駐車場に至る。

 秋の空は曇天。気づけば霧も晴れていた。

 レナの目も少しだるいモードで、朝から通常営業を始めていた。

 ミヒロが思い出したようなフリをした。

 おそらく、私の気分を上げに来た。

「ソナ、じゃっぷぅ食うよな?」

「ん、じゃぶ?」

「じゃっぷぅ、だ。氷菓子」

「寒みし、どうだべ」

「そっか。じゃっぷぅ4人分で行こうか」

「おめだば、人の話聞げしッ!」

 結局、でもね。

 小さくても旅は堪能したい、という欲求もあるのだ。

 軽快なきみまちソングを聞きつつ、歩いて道の駅に入るのは、トイレ休憩のためだけじゃないぜ。

米代川よねしろがわの見える、窓側の机椅子に4人で座る。

道の駅ふたつい内の福多珈琲ふくだコーヒーさんで、買ったばかりのじゃっぷぅを食べるよ。

 じゃっぷぅは、氷とアイスを混ぜたような懐かしい触感だ。

 かき氷やシャーベットより、舌触りがなめらかである。

 子供受けする甘味は、女子高生の私にもクリティカルヒットする美味さだった。

 練乳入りで、私は正解を導いたと直感した。

 単味のじゃっぷぅを上手にかき混ぜながら、レナは食べている。

 それはともかく、不思議なことをミヒロが聞いてきた。

「ソナ、レナっことじゃっぷぅシェア食いしないのか?」

「1人1個だべ」

「あ~、それ、あたしが前に言ったんだった!」

「何、悔しそうな顔してら?」

おべでろ~」

 何、ハンカクサイさんの口調の真似をミヒロはしているんだ。

 超神ネイガーさんは、今ここにいないぞ。

 窓の外のドアが開いた。

 いつの間にか、席を立っていたドームが肩を落として帰ってきた。

 じゃっぷぅを飲み物のように一気飲みした。

能代の曹司本家そうじほんけの娘、ドームは特殊な訓練を受けているのだろう。

 いや、本家でも受けていないか。

 女子大生の個性、ちょっと変わった個性、はドーム個人のものだ。

 その女子大生さんは、空のカップを机に置いた。

 昨日の雨で米代川の水位が上がり、今日のカヌー教室は中止になったそうだ。

 ここ数日のうち、昨日はまずまず雨が降ったと思う。

 ジャプジャプ混ぜてじゃっぷぅを食べているレナが、猫目でじ~ッと、ドームを睨んだ。

「お前、私がカヌーで慌てふためくのを、ニヤニヤした顔で見るつもりだったろう」

「まぁ、そんなところ。もう今日のハプニングは起きないから安心して」

「腹が立つが、素直でよろしい。次はどこへ行くんだい」

「ん~と、きみまち阪で紅葉狩りにしよう」

 おぉ~! 恋文と紅葉の聖地!

 私は目を輝かせた。そういうのは文学的で素敵だ。

 次の私は、惚けた声を上げた。

「……あれ、して恋文なんだべ?」

「「「ふふん」」」

 周りの3人は、ドヤ顔で答えを知っていますアピールだ。

私の父は大館市おおだてし北秋田市きたあきたしには詳しい。

だけど、あまりの能代のしろ方面のことを教えてくれなかった。

 父が口を閉じる理由、私にも分かる。

自ら出奔してしまうほど、曹司本家そうじほんけとの確執があり、昔の話を未だにしたがらないようだ。

 その結果、私1人なんだっけ状態だよ。親の問題と娘の好奇心は違うのに。

 むむむ。

 無知が恥ずかしい。友達みんなが私より知っていて悔しい。

 何なの、これ!

 じゃっぷぅを食べた空容器を、先に1人、ゴミに捨てた。

 私はさっさと、道の駅ふたついの横の信号機がある交差点へ歩いて行った。

 勝利の妄想モードから我に返った3人は、慌てて追ってきた。

 ただし、不機嫌な私の顔は、すぐに溶けた。目に見える光景が全てだった。

 傾斜地と岩場。水量が多く広い、一級河川の米代川。

 その立地が紅葉の木々の美しさを際立たせる。

 本当に、神様の、自然界の祝福を受けた場所だと思う。

これが最強のパワースポットと呼ばれる、きみまち阪公園ざかこうえんの紅葉だ。

 そうそう。きみまち阪紅葉まつり。今がちょうど盛りの期間なのだ。

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【つづく】

秋田へようこそ探偵エルフさん12-2

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